モーガン牧場牛について



アメリカの中心部にあるネブラスカ砂丘は、遊んだりパーティするには本当に最悪な場所です。でも最高の牛肉を作るなら、ここは世界一です。私が 「ミートガイ」になるずっと前、家業を守る為に幼い私たち兄弟は牧場の手伝いをしていました。けれど、誰もが絶対にやりたくないような厄介な仕事はいつも 末っ子である私に回ってきました。結局それが嫌で家出!?そして、がむしゃらに走って、走って、走り続けて、辿り着いたのが日本でした(笑)。 私たちモーガンの家系は、はるか昔から何世代にもわたりカウボーイをしてきました。正確に何世代が分からないのは、きっと高等数学が牧場経営には不必要か らだと思います(笑)。現在のネブラスカの牧場は1934年にオーリーおばさんによって開設されました。噂では(まだまだ生々しい家族のスキャンダルを暴 露してしまうと・・・)、彼女は10代の頃、かなり年上の石油大富豪と駆け落ちしたようです。そしてこの牧場は相続財産の一部だったようです。後に私の両 親は牧場をおばさんから譲り受け、母は未だに拒否権を持つ女王のごとく君臨しています。(仲間はずれにもされることも多いですが(笑)・・・)


専門用語に"テロワール"という言葉がありますが、誤解されると問題になりかねないので、こういった洒落た言葉をネブラスカの牧場主はあまり使 いません。それはいいとして、モーガン牧場の牛肉はその周辺環境なしでは語れません。ロデオでしか知られていない小さな町、ネブラスカ州バーウェルの北西 20マイルに位置するのが10,000エーカーの私たちの牧場です。ここでは、ゆるやかな丘や見渡す限りの野草地、そして昔のホームステッド法で取得した 土地であることを示す地面に掘られた壕とポプラの木だけが特徴です。そこはネブラスカ砂丘と呼ばれ、砂丘の風にさらされていた地帯は州の1/4を覆う芝生 によって安定した地になりました。 この砂丘は、今も昔も変わらず住むのには全く適してない場所です。伐採する木がなかったので開拓者たちは地面に穴を掘って生活しました。地中には鉱物もな かったので、採掘業や製造業が栄えることもありませんでした。牧草は耕されましたが、ひっきりなしに吹く風が種や表土を吹き飛ばし、作物を育てる試みは完 璧に失敗してしまいました。その上、冬は長く寒く苛酷で、11月半ばごろまでくると「寒くない?」と聞かれることに皆うんざりしてしまいます。 けれども不思議なことに、牛と不逞の輩は砂丘で非常によく育ちます。経済成長を促す厄介な人々が移り住むこともなかった為、自然環境は汚染されることなく 綺麗なまま保たれたのです。モーガン牧場には牛肉生産に欠かせない綺麗な水があります。特に素晴らしかったのは砂がフィルターとして機能し、各牧草地にあ る二つの風車が帯水層から牛たちが飲むミネラルウォーターをくみ上げてくれた事です。ちなみにこの風車が各牧草地に一つではなく二つある理由は、とても壊 れやすいからです。その為いつも誰かが塔に這い上がって修理をしなくてはなりません。その誰かとは・・・上記の家出をした部分をご参照下さい。 最高の牛肉は最高の牛から始まります。モーガン牧場では牛はロックスターのようなものです。遺伝子的により良い個体を探し、彼らを品種改良し、結果をモニ タリングしながら、何十年もかけ世代を重ねることで家畜は作られます。他の牧場は純粋に牛の成長速度や大きさに着目していましたが、私たちは一般的な市場 とはちょっと違った視点から牛を育てようとしていました。それは「食べること」に特化したのです。

実際美味しい牛になるよう選抜育成するのは容易なことではありません。例えば牛ではなく鶏を育てるのであれば、こちらは遥かに簡単です。鶏は6 週間餌を与え、掴んで鍋に入れて、味見をして、一番美味しかった血統の雌鶏の卵だけを孵化させます。必要なものは鋭いナイフと羽を引き抜く勇気だけです。 肉牛を育てるのには3年はかかり、その成長過程では発達段階ごとに与える栄養が異なります。また、季節や天候の厳しさもが完成する牛に影響を与えます。最 終的に肉牛の飼育・管理に必要なのは、失敗を恐れない心と「だから言ったじゃないか!」という大家族の批判的な(愛情表現の!?)言葉だったりします。こ うして研究を積み重ねた私の兄達は、和牛の遺伝子を牛に掛け合わせることを考え出しました。この試みが成功するまでには何年も掛かりましたが、幸いネブラ スカにはキャバクラも無いので、他にすることもありませんでした。

例えば私がこの先、いつかどこかの飲み屋で、牛の4つの胃の名前を答えられた客に「生涯飲み放題無料券」が贈呈されるというキャンペーンに遭遇 したとします。その数カ月後、家族によってアルコール依存症更生施設に入れられる事を除いては、そこで大活躍して美味しい思いをするのは私だと思います。 こんな稀な状況以外で、牛の胃の名前やその驚くべき消化機能についての知識で得するのは、この業界に身を置く人だけだと思います。美味しい牛肉を生産する 為には給餌が重要な役割を担っています。そしてその給餌の良し悪しが分かるまでには30カ月以上かかります。そんな気の遠くなるようなプロセスを経て、牛 肉は生産されるのです。もう一度鶏と比べてみましょう。ブロイラーと呼ばれる若鶏ならたった6週間しかかかりません。これは鶏が本当の肉でないと言われ野 菜に分類される理由の一つです(笑)。 牛肉は草で決まります。でもそれは単純に牛を外にだし、放牧させるだけでいいというわけではありません。育ち始めの草は子牛を育てるのに適した栄養価の高 いミルクを作り出すことができるため、草が芽吹く時期である春に牛は子供を生みます。この子牛を生むタイミングが早すぎても遅すぎても、草はまだ準備段階 であったり育ちすぎたりして、よい草を母牛に与えることが出来ません。母牛の食欲がなくなれば、子牛の発育が悪くなります。そのため毎年4月に何百もの牛 が一気に分娩するように促します。言うまでもなく、毎年分娩時期は目がまわる忙しさです。分娩前後は毎時間問題がないか確認し、病気になったら治療をしま す。必要な子牛には授乳もしなければなりません。子牛を育てるのは想像以上に手間が掛かります。私自身三人の子供がいて、子育ては人間とそんなに変わらな いと確信をもって言うことが出来ます。あえて違いを探すとすると、子牛は競り市でバイバイできるけど、人間はそうはいかないところでしょうか(笑)。 牛は代替部品がなく、しかも定期的なメンテナンスが必要な芝刈り機の様なものです。幸いにも、私たちの所有する牧草地は世界でも珍しいほど多種多様な草に 覆われています。そしてこの信じられないほど多種多様な自然の飼料には、豊富なビタミンやミネラルが含まれています。牛の初期成長期の栄養環境は、後の肥 育期間の成功を大きく左右します。私たちの牧場では多種類の草を守ることを最優先し、過放牧を防ぐために牛たちを定期的に新鮮な牧草地へ移動させます。灌 漑している牧場はないため、ネブラスカ州では毎日天気が話題に上らない事はないほどです。逆に私は日本人が天気についてほとんど話さないと驚く日本で唯一 の外国人かもしれません。 霜降り・やわらかさ・味は美味しいステーキを作るのにかかせない3つの特性です。恵まれた自然環境を生かし愛情いっぱいに牛を育てている私たちですが、こ こからは具体的な育成方法についてお話します。まず第一段階は、私たちが干し草俵を保存する家畜囲いから始まります。日本輸出プログラム用の選りすぐりの 未経産牛は、その囲いで規則的に餌を与えることで計画的にゆっくりと太らせることができます。ここでは一人が餌の入ったトラックを運転して、もう一人が ゲートから牛が逃げ出さない様に見守るという2人体制で作業をしています。私たちはこれを家族で行っているためなかなかスムーズにはいかず、餌を与える時 間は罵り合い、互いに互いを悪く言って非難します。これがモーガン牧場の企業文化であり、より良い肉牛を育成するためには必要不可欠なやり方です。 第二段階は少し専門的です。牛たちは私たちのパートナーであるマイキー・バーンハムさんの牛専用クラブメッドでバカンスの時間を満喫します。砂漠ではない ネブラスカ州の部分はほぼ全て農場で、トウモロコシやジスチラーズグレイン、ムラサキウマゴヤシ等、様々な種類の飼料が手に入ります。バーンハム一家は モーガン一家とは違ってプロの牛飼いで、アメフト観戦や二日酔いにかかわらず、正確な量の餌を与え、厳密な給餌計画を遂行してくれます。そのため牛たちは ここでよく太り、ストレスのない幸せな生活を送ることで、味もとてもよくなるのです。太っていて幸せな中年ガイジンは、残念ながらただの肥満男で何の役に も立ちません。

牛たちはアメリカにあると畜場で最後の段階を迎えます。アイルランド系三世のアメリカ人が経営するJ.F.オーニールパッキングは近年アメリカ では珍しい家族経営の食肉パッカーです。ここで若い雌牛たちは慈悲深く穏やかに天に召されるのです。私の兄はその過程をいつも見守ります。この工場は、一 日何千頭もの牛をと畜する大手食肉パッカーと比べると非常に小さな施設で、一日二百頭しか処理することができません。 目が行き届く小さな工場で牛肉を処理することには、大きな利点があります。この段階で失敗することは3年分の仕事を無駄にしてしまうことを意味します。と ても慎重にならなければいけない部分です。まず工場で牛の胴体を半分に切り分ける作業をします。その後通常の工場では、冷蔵庫の中で吊るされた枝肉は冷水 洗浄されます。水をかけるのはまだ熱い枝肉から水が蒸発することによって重量が減ってしまうのを防ぐためです。しかし私たちはあえて冷水をかけることはせ ず、冷却倉庫の中で通常よりも2-3倍長く保管します。これをすることで5%余分に肉の水分が蒸発し、その分コストが上がりますが、そうすることで肉の旨 みが増加し食感や風味の良いステーキなります。熟成させたお肉は適度な水分がとび、肉本来の旨みが凝縮していて、冷凍・解凍後も肉から水分が落ちにくくな ります。 ワインもステーキも熟成することによってコクがでます。お肉の場合は、酵素の働きで繊維がゆっくりととけ柔らかくなり、奥深い味わいになります。私たちは お肉を冷凍させる前に最低でも6週間の熟成期間を設けています。

食肉輸入の難しさを最初から知っていたら、私は「ミートガイ」ではなく、「Tバックガイ」や「芝刈りガイ」、「英会話ガイ」になっていたと思い ます。2013年の4月に、アメリカ産牛肉への輸入規制が緩和されました。しかしこの規制緩和は、輸入手続きや検査の緩和・簡素化を意味していませんでし た。私たちの牛肉は認可された施設から名古屋港へ向けて輸出された第一号目のアメリカ産牛肉となりました。そして第一号目のお客様ということで、とてもフ レンドリーな歓迎を受けました。フレンドリーとは言ってもフィリピンパブで「いらっしゃいませ。お会いできてうれしぃ~!!」というタイプの歓迎ではな く、1つ1つの段ボールを3回検査してもらえるプレンドリーさでした。ともあれ、無事許可を頂いて、その後38.5%の関税を速やかに支払い、ついにお肉 を受け取ることができました。めでたし、めでしたし。

モーガンビーフの最終地点は、名古屋にあるミートガイの加工施設です。私たちのクリーンルームでお肉はフライパンサイズにカットされ、皆さんの ご注文を今か今かと待ちわびています。ご注文を頂いたら、商品を箱詰めして、数日であなたのご自宅までお届けします。僻地であるネブラスカ砂漠からあなた のキッチンまで、とても長い旅でした。そして良くも悪くも、そのすべての旅路にモーガン一家はいたのです。

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